閉する重い音が

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閉する重い音が

メラのモニタが置かれている。その四分割された画面のうち二つに、声の主である澪が映っていた。執務机の後方から捉えたものと、扉の上部から捉えたものだ。どちらも不鮮明なうえ小さくしか映っておらず、表情まではわからないが、大まかな動きであれば認識可能である。
 モニタに映っている彼女は婚姻届を胸に抱いて深々と一礼した。そのまましばらく無言で直立していたが、再び頭を下げると、今にも駆け出さんばかりに扉の方へ足を進める。途中、床に置いてあったボストンバッグを引っつかんで。
 パタンと扉の閉まる音を聞いたあと、悠人はイヤホンを外した。
 駆け足で遠ざかっていく軽い音と、金属製の扉の開、続けて廊下の方から聞こえてきた。どうやら彼女は足を止めずに帰っていったようだ。その間も、モニタでは大地が腕組みをして立ち尽くしていた。

 悠人は重たい体を引きずるように椅子から立ち上がると、奥のベッドに倒れ込んだ。はぁ、と無意識に大きく息を吐きながら仰向けになり、膝から下を垂らしたまま、薄く汗ばんだ額に右手の甲をひたとのせる。その冷たい感触に少し気持ちが落ち着いてきた。ゆっくりと顎を上げて白い壁に視線をめぐらせ、ある一点でとめる。
 そこには、少女時代の美咲を描いた肖像画があった。
 つい先日までは橘の大階段に飾られていたのだが、怪盗ファントムに盗ませてその存在を世間から抹消し、今は名実ともに大地ひとりのものになっている。それで、彼の寝室であるここにひっそりと掛けてあるのだ。客人にも誰にも見せびらかすつもりはないのだろう。
 その瞳には、何が映っている——?
 悠人は目を細め、肖像画として描かれている幼い美咲に、大人になった彼女を重ねて問いかける。このみっともないありさまを見てどう思うだろう。間違っていないと言って微笑んでくれるだろうか。遠い昔のあのときのように——過去に思いを馳せ、胸が締め付けられるのを感じながら目を閉じた。

 カチャ——。
 静寂の中にひっそりと控えめな音が響いて扉が開き、大
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